Japanische Klassiker mit Furigana
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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
Lesen Sie 沙漠の古都 (さばくのこと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.076 Zeichen · 220 Bildschirme
そうして真っ直ぐに前方を見ると、面紗の女とダンチョンとが木立の繁った暗所の方へ、側目もふらず歩いて行く。程よい間隔を中に保って、ラシイヌはその後を追って行った。
鋭い獣の鳴き声は――それは猩々の鳴き声であるが――樹立の彼方、鉄柵の向こうの公園の外の人道から、またもその時間に聞こえて来た。面紗の女とダンチョンとはその鳴き声に導かれるように公園の裏門を辷り出た。そして人道を南の方へ足を早めて走って行く。三度も四度も行手の方から猩々の鳴き声が聞こえて来る。ラシイヌはこれも駈け足で二人の後を追っかけた。
こうして幾分走ったろう? 暗い大きな建物の蔭から、獲物を狙う豹のようにひらりと走り出た支那人がある。血気盛んの若者らしく筋骨なども逞しく、走って行く脚も軽々と、二人の男女を追って行く。
ラシイヌはちょっと驚いて、その支那人を見詰めたが、
「ほほう、彼奴か、あの男か!」
思わずもこう呟いた。こう呟いたそれと同時に、面紗の婦人の何者であるかを、閃めくように理解した。
面紗の女とダンチョンとは、次第に速力を速め出した。まるで舞うように走って行く。二人の走るのを誘うかのように、幾度も幾度も猩々の声が行手の方から聞こえて来た。