Japanische Klassiker mit Furigana
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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
Lesen Sie 沙漠の古都 (さばくのこと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.076 Zeichen · 220 Bildschirme
私は腰掛けから飛び上がって林に向いている銃眼から声のする方を眺めて見た。私の見たものは何んであったろう? 巨大漢! 巨大漢! 否怪物だ! 漆黒の毛に蔽われた身丈ほとんど八尺もある類人猿がただ一匹樹枝を雷光のように伝いながら血走る両眼に獲物を見すえ黄色い牙を露出しにしてその牙をガチガチ噛み合わせながらこっちに向かって飛んで来る。彼の著しい特色というのは長い尻尾を持っていることでその尾はちょうど手のように自由の運動をするらしい。すなわちその尾を枝に巻きつけて全身の重みを支えるばかりか時にはその尾を振り廻して行手を遮る雑木を叩くと丈夫の生木さえその一撃で脆くも二つに千切れて飛んであたかも鋭い鉞なんどで立ち割ったようになるのであった。尾を持っている類人猿! その有尾人猿に追いかけられて悲鳴を上げながら逃げて来るのは土人の若い女であった。長髪を背後へ吹きなびかせて恐怖に見開いた大きな眼を小屋の方へ高く向けながら足を空にして走って来る。赤銅色の逞しい四肢は陽に輝いて白く光り腰の辺に纒った鳥の羽根は棕櫚の葉のように翻えり胸を張って駈けるその姿は土人とは云え美しい。