Japanische Klassiker mit Furigana
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かわはぜ
河沙魚
林 芙美子
Lesen Sie 河沙魚 (かわはぜ) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.653 Zeichen · 24 Bildschirme
自分と云う性根のない女を、思いきり虐なんでもらわなければならないような気がした。そのくせ、千穂子は与平を憎悪する気持ちにはなれなかった。俎板の上で首を切られても、胴体だけはぴくぴく動いている河沙魚のような、明瞭りとした、動物的な感覚だけが、千穂子の脊筋をみみずのように動いているのだ。
風が弱まり、トタン屋根を打つ雨の音がした。なまあたたかい晩春の夜風が、どこからともなく吹き込む。麦ばかりのような黒い飯をよそって、千穂子は濁酒を飲んでいる与平のそばで、ぼそぼそと食べはじめた。
風のむきで河の音がきこえる。与平は、空になったコップを膳の上に置いて、ぽつねんと、丼をなめている猫を見ていた。
「おじいちゃん、私、ご飯を食べたからかえりますよ」
「うん……」
「変な気をおこさないで下さいよ。おじいちゃんがそんな気を起すと、私だって、じっとしてはいられないもの……」
与平は眼をしょぼしょぼさせていた。薄暗い電気の光りをねらって、かげろうのような長い脚の虫が飛びまわっている。――与平が五十七、千穂子が三十三であったが、お互いは、まるで、無心な子供に近い運命しか感じてはいないのだろう……。