Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうえつクラブ
法悦クラブ
野村 胡堂
Lesen Sie 法悦クラブ (ほうえつクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.176 Zeichen · 28 Bildschirme
のために開放して居る外、毎週三十人の客を賄ない、自家用車を乗り廻して、気さえ向けば、会員達のどんな申出にも応じて、歓楽追求のためには、決して背後を見せないという、最も勇猛なる快楽主義の戦士でした。
その夫人阿夜子は、どんな時でも、夫金弥の側に、慎ましく控えて居りますが、此節の人にしては珍らしい大痘痕の上、申分なく醜い顔の持主で、若くて天然痘を患った時、喉まですっかり潰してしまい、鵞鳥が締め殺されそうな声をして居る相で、いつでも洋装に深々とヴェールを下げ、決して顔も見せず口もきかないのが特徴とされて居ります。
その証拠には、お茶などを呑むとき、口までヴェールを上げることがありますが、その時チラと見える頬から顎へかけて、無残にも小豆大の赤黒い痘痕が、籠釣瓶の佐野次郎左衛門で、会員達の好奇心も一ぺんにさめて、思わず顔を反けることも少くはありません。
これほど醜い夫人を、浮気者らしい茶谷金弥が、大した嫌な顔もせずに、いやそれどころではなく、恐ろしくいとしがりさえして、自分の側から寸刻も離さないのは、多分阿夜子夫人には夥しい財力があり、茶谷金弥の底抜けの贅沢な生活が、それで全部を賄われているので、醜い夫人を何うすることも出来ないのではあるまいか――とこれは会員達のひそやかな噂でした。