Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なきむしこぞう

泣虫小僧

林 芙美子

Lesen Sie 泣虫小僧 (なきむしこぞう) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.906 Zeichen · 70 Bildschirme

Aozora Bunko

啓吉は色々な夢を見た。

「この子は薄目を開けて眠るので気味が悪いわ」

と、男が泊ってゆく度、母親が弁解していたが、薄目を開けて寝ると、眠っていても声をたてる事がある。

朝になって啓吉は目覚めて見ると、夢に見たものが、部屋いっぱい散らかっていた。自分のそばには運転手や助手達が三四人も大鼾で寝ていた。隆山は寝床に腹這ったまま手紙のようなものを書いている。

「どうだ! ゆんべは寝られたかい?」

「…………」

「中野まで送ってゆくかな。安心しな」

「ねえ、ここはどこ?」

「ここか、ここは神田美土代町さ……」

手紙を書き終ると、隆山は厚い唇で封をしめして、「さて、これで田舎の神さんも御安心だ」と、立ちあがるなり、裏の小窓を開け、尿を二階から飛ばした。

寝ていた啓吉にはその小窓がよく見えた。雲の去来を見ていると、啓吉は、雲が一つ一つ生きているように思えた。

「なぜ、雲は浮いたり走ったりするの?」

「雲かい? さア、煙だから軽いンだろう……」

啓吉は学校へ行って先生に訊くに限ると思った。陽が当っていい天気のせいか、啓吉は革の匂いのするランドセルが懐しくなった。

「僕、やっぱりねえ、渋谷の叔母さんとこへ帰ろう……」