Japanische Klassiker mit Furigana
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どろぼうとわかとの
泥棒と若殿
山本 周五郎
Lesen Sie 泥棒と若殿 (どろぼうとわかとの) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.601 Zeichen · 41 Bildschirme
――袴をはき、刀を持てばよい、広縁のきしみを除けて、沓脱ぎの草履をさぐり当てた。そうして前庭へ出てゆくとたん、うしろから伝九郎の声がした。
「おめえいっちまうのか、信さん」
成信は身の竦む思いで立停った。
「おれを置いて、いっちまうのか」
「――伝九郎、堪忍して呉れ」成信は頭を垂れ、声をころして云った、「――おまえはこの土地でりっぱに生きてゆける、おれも生きたい、おれも武士として生きたくなった、おまえがおまえらしく生きるように、おれもおれらしく生きたくなったんだ、……世話になり放しで済まない、まことに済まないがおれをゆかせて呉れ」
「晩の飯はこのためだったんだな」伝九郎は広縁の柱を抱いたまま云った、「おらあ信さんといっしょにいたかった、一生ふたりで暮せると思ってたんだ、信さんと暮すようになってから、初めておらあ生きる張合ができ、世のなかが明るくみえてきた、ようやっと人間らしい気持になれたのに、――いまんなっておめえにいかれちまう、信さんてえものがいなくなる、……伝九が可哀そうだたあ、思っちあ呉れねえのか」
成信は夜の空をふり仰いだ、頭をはげしく左右に振り、きっぱりと力をこめて云った。