Japanische Klassiker mit Furigana
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ふどうするちか
浮動する地価
黒島 伝治
Lesen Sie 浮動する地価 (ふどうするちか) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.079 Zeichen · 29 Bildschirme
五
六
七
五
十一月になった。
ある夜、トシエは子を産んだ。兄は、妻の産室に這入った。が、赤ン坊の叫び声はなかった。分娩のすんだトシエは、細くなって、晴れやかに笑いながら、仰向に横たわっていた。ボロ切れと、脱脂綿に包まれた子供は、軟かく、細い、黒い髪がはえて、無気味につめたくなっていた。全然、泣きも、叫びもしなかった。
「これですっかり、うるさいくびきからのがれちゃった。」
トシエは悲しむかと思いの外、晴々とした顔をしていた。これは、まだ、兄の妻とならないさきの、野良で自由にはねまわり、自由に恋をした、その時の顔だ。妙に、はしゃいでいた。
つゝましさも、兄に頼りきったところも、トシエの顔から消え去ってしまった。赤ン坊は死んでいたのだ。
一カ月の後、彼女は、別の、色の生白い、ステッキを振り振り歩く手薄な男につれられて、優しく低く、何事かを囁きながら、S町への大通りを通っていた。
虹吉も家を捨てた。
六
そして、僕が、兄に代って、親を助けて家の心配をして行かなければならない、番になった。
こいつは、引き合わん、陰気くさい役目だ。
七
十六燭光を取りつけた一個の電燈は、煤と蝿の糞で、笠も球も黒く汚れた。