Japanische Klassiker mit Furigana
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かいりゅう
海流
宮本 百合子
Lesen Sie 海流 (かいりゅう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.977 Zeichen · 72 Bildschirme
「あら加賀山さん、おきていらしたんじゃなかったんですの」
という、寄宿舎の看護婦の沖のひきのばしたような声がした。
「寝ちゃったわ。――御用?」
「三輪さん外泊でしょう。お淋しかないかと思って……」
宏子はむっと黙って、物音を立てずに沖の去るのを待っていた。お淋しかないかと思って! 寄宿では一応学生の感情をはばかって、舎監が自分から学生の部屋を歩き廻るようなことはしなかった。その実際上の代りを看護婦の沖がつとめた。彼女は中途半端な自分の立場をいいことにして、誰の部屋へでも時をかまわず、口実にならない口実で入りこんだ。皆に顰蹙され切っていながら、鈍感とも鉄面皮とも判断つかない笑顔で金とプラチナの歯を光らしながら、沖は依然として部屋部屋を歩いているのであった。
二
構内にある礼拝堂から、日曜日の朝礼を知らせる鐘の音が響いて来た。風がつよいと見えて鐘は余韻なく遠くに聞える。宏子は枕の下へ手を入れて時計を見た。朝飯には出ないことにして、毛布の下でまだ睡り足りなくて熱っぽい体をのばした時、誰かが宏子の部屋のドアのすぐ外のところへくっついて、
「ね、そんなに云わないで――一人で行って頂戴よ。