Japanische Klassiker mit Furigana
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うみべしょうきょく(せんきゅうひゃくにじゅうさんねんにがつ――)
海辺小曲(一九二三年二月――)
宮本 百合子
Lesen Sie 海辺小曲(一九二三年二月――) (うみべしょうきょく(せんきゅうひゃくにじゅうさんねんにがつ――)) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.617 Zeichen · 4 Bildschirme
*
ああ、海! 海※(感嘆符二つ、1-8-75)
広い懐の大海
お前の際限ない胸を張れ!
濤をあげよ。
そして、息をのむ大洪水の瞬下に
此あわれに 早老な女の心を溺れ死なせ。
波頭に 白く まろく、また果かなく
少女時代の夢のように泡立つ泡沫は
新たに甦る私の前歯とはならないか。
打ちよせ 打ち返し轟く永遠の動きは
鈍痲し易い人間の、脳細胞を作りなおすまいか。
幸運のアフロディテ
水沫から生れたアフロディテ!
自ら生得の痴愚にあき
人生の疲れを予感した末世の女人には
お身の歓びは 分ち与えられないのだろうか
真珠母の船にのり
アポロンの前駆で
生を
双手に迎えた
幸運のアフロディテ
*
ああ、劇しい嵐。よい暴風。雨
春と冬との変りめ
生暖い二月の天地を濡し吹きまくる颱風。
戸外に雨は車軸をながし
海から荒れ狂う風は鳴れど
私の小さい六畳の中は
そよりともせず。
温室の窓のように
若々しく汗をかいた硝子戸の此方には
ほのかに満開の薫香をちらすナーシサス
耳ざわりな人声は途絶え
きおい高まったわが心と
たくましい大自然の息ぶきばかりが
丸き我肉体の内外を包むのだ。
ああ よき暴風雨
穢れなき動乱。
雨よ
豊かに降り濺いで