Japanische Klassiker mit Furigana
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うんのじゅうざはいせんにっき
海野十三敗戦日記
海野 十三
Lesen Sie 海野十三敗戦日記 (うんのじゅうざはいせんにっき) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.094 Zeichen · 167 Bildschirme
あの夥しい埃の積んだ本が皆焼けたかと長歎した。新本にちょっとさわると、本のあつかい方がよくないといってえらく叱りつける本屋があったが、この本屋も跡片なし。渋谷から青山の通りを経て赤坂見附まで全くよく焼けたもの。古くからの、そして充実した町であっただけに灰燼(かいじん)に帰した今日、口惜しさがこみあげてくる。
材木町で下りて、歩き出した。南浦園も外側の支那風のくりぬきのある塀だけが残っている。あの粋な築山(つきやま)も古木も見えず。支那風のくりぬきから中をのぞけば、奥の方に桃色の腰巻が乾してあるのが目についた。僅かに南浦園のかおりがする。
角に消防署があるところで左へ曲って仙台坂へ出るつもりであるが、行けども行けどもその消防署が見えぬ。そこで心細くなって、右側にバラックを建てて住んでいる家へ声をかけて聞くと、ていねいに教えてくれた。「すっかり焼けて町の様子が変わっていますがな……」とその老人は元気な声で語った。
消防署は焼けずにあったが、私の考えた二倍以上も道のりがあるように感じたのはふしぎである。そのあたりへ行って、初めて家が焼けないで残っている。