Japanische Klassiker mit Furigana
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しせい
消えた受賞作 直木賞編
富田 常雄
Lesen Sie 消えた受賞作 直木賞編 (しせい) von 富田 常雄 (とみたつねお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.806 Zeichen · 36 Bildschirme
藤三が数えた、五十枚の百円札を手に振り返った時、ミチは洋服を脱ぎすてて、一糸も身につけて居なかった。
「小父さん、妾はお礼をしなければならないのよ」
ミチはぎらぎらと眼を光らせ、弱々しい微笑を浮べた。藤三は鉛色の光のなかに妖しく浮いた白い肉体と、その刺青を見た。
「お、お前さんは考え違いをしているんだ」
藤三はあえぎ、それから、首を振った。
「野郎!」
ミチはその声を背後で聞いた。その一瞬に彼女の体は横に跳ねのけられ、勇の体が跳躍して藤三にぶつかって居た。
藤三は壁に寄り掛ったままだらりと両手を垂れた。勇の匕首が彼の脇腹をえぐったのだ。
「あんた!」
ミチは絶叫した。
「この小父さんは、妾の……妾の刺青にだけ惚れて居て……」
その声が終らない内に、ミチは勇に蹴倒された。
「い、勇阿兄い……安心しな、俺は何にもしやしなかった」
かすれた声で藤三はそう言った。が、勇はその声を聞いて居なかった。彼は兇暴な嫉妬に慄えてミチを蹴倒すと、その髪をつかみ、その白い肉体を打擲し始めた。それは無言の若い雄雌の野獣の闘争であった。ミチはのた打った。彼女の全身は荒い呼吸と苦痛と、身悶えに波の如くうねった。