Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅうかんそうわ
清修館挿話
林 芙美子
Lesen Sie 清修館挿話 (せいしゅうかんそうわ) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.062 Zeichen · 20 Bildschirme
「そいでまだ居るのかい?」
「いゝえ此間、間代を半分入れて、体にいゝからつて二人でどツか郊外の方に越して行きましたよ」
谷村さんは瞼の裏が熱くなつて来る程、癪にさわつて仕方がありませんでした。此の様なふしだらな事は、誰にも云えるものではありませんでしたし、谷村さんはめつちやくちやに腹が立つてなりませんでした。
本箱の上のメスを取つて、壁に投げつけたり、本を裂いてみたり、まるで虎のようになりました。そして女を愛すると云う事が、こんなにもくだらない事であつたのかと、谷村さんは初めての恋愛であるだけに、大変苦しみが深いようであるのです。
すると、太つちよの女はかつぽう着を顔に押し当てゝ泣き出してしまいました。
「何も君が泣く事はないじやアないか」
「貴方がそんなにしていらつしやると悲くなります」
「何も君にそんなに悲んで貰う理由なんかないよ」
「許して下さい」
「君は早く台所へさがつとくれよツ、何も僕は君から許してくれの何のつて言つて貰う理由ないんだから……」
「私が本当に悪いんです」
「馬鹿! 勝手にしろ」
太つちよの女は、いつまでも歯を噛みしめて泣いていました。
谷村さんは、自分の気の狂いそうな事よりも、まず此の女のロンロンと云つた風な泣声が癪でなりませんでした。