Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅうかんそうわ
清修館挿話
林 芙美子
Lesen Sie 清修館挿話 (せいしゅうかんそうわ) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.062 Zeichen · 20 Bildschirme
「あれです」
谷村さんは蜆汁の事を考えて、又、フッと憂欝になりました。
「ありがとうございましたわ、本当に……」
女のひとの眼は空の色を写していたせいか、美しく、またなくなまめかしく谷村さんの心をかすめました。
谷村さんは、下宿の下まで来ると、またきびすを返して、女のひとに別れました。
3 もう、街にはあの谷村さんの好きな、夕暮の燈火がつきそめていました。谷村さんは、さらに声高く李白の詩をうたつて、下宿へ帰つて来ました。下宿の軒にも灯がついています。軒の下宿人の名札のビリッコに、「谷村三四郎」と云う、自分の名が見えました。谷村さんは、十二三人の下宿人の名札をそつとしらべて見ました。今日の女のひとは、どの男を訪ねて行つたのであろうかと、ですが、どれもこれもあの美しい女の訪ねて行きそうな男の名前なんぞはなく、只一人これであろうかと思つたのは、「小松百合子」と云う優しい女名前でありました。
「ハハン、さては、女の友達を訪ねて来たのであろう」
谷村さんは、心が何か静まつて、一寸うれしく肩で笑いました。と、ふと自分の名札を見ますと、女の髪の毛が、三四郎の三の字のところへくつついて、フワフワ風に吹かれていました。