Japanische Klassiker mit Furigana
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せいひんのしょ
清貧の書
林 芙美子
Lesen Sie 清貧の書 (せいひんのしょ) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.061 Zeichen · 36 Bildschirme
私は手鏡へ顔を写してみたりした。「お前も流浪の性じゃ」と母がよく云い云いしたけれど、二十三と云うのに、ひどく老け込んで、脣などは荒さんで見えた。瞼には深い影がさして、あのように誇っていた長い睫も、抜けたようにささくれて、見るかげもない。
紅もなければ白粉もない、裸のままの私に、大きい愛情をかけてくれる与一の思いやりを、私は、過去の二人の男達の中には探し得なかった。それに、子供の頃の母親の愛情なんかと云うものは、義父のつぎのもののようにさえ考えられ、私は長い間、孤独のままにひねくれていたのだ。
五番目の手紙には、「まだ、お前の手紙を手にしない。君は例の変な義理立てと云った風なものに溺れているのだろう。もう一二年もたったらそれがどんなに馬鹿らしかったかと解るだろうが、そんな古さは飛び越える決心をして欲しい。君は、僕に、なるべく悪い事を聞かすまい、弱味を見せまいとしているらしいが、そンな事は吹けば飛ぶような事だ。マア、とにかく困った習癖だと云っておこう。同封の金は、隊で貰ったのと、東京を出る時、旅費や宿料の残りだ。僕は壱銭もなくなった。だが生きるようなものは食っている。