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Japanische Klassiker mit Furigana

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しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Lesen Sie 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.023 Zeichen · 133 Bildschirme

Aozora Bunko

結局、それならどうしろというのだ。世の中は世の中は、善いことをしても、そのまま歓びはしないのだ。それかといって、悪いことをすれば、なお、わいわいと騒ぐだろう、手足の出ない処へ押込めておいて、出ないのは悪い悪いと云ったって、それは無理だ。俺は思う。人間なんて浅間しいものだ。自分が馬鹿に出来る者だけ見せて置けばいつも安心して、偉そうなことを云って納まるのだ。俺は何も出来ない、出来ないのではない。させないのだ」

正隆は、彼の生活の記念ともいうべき正房を、瞳子(ひとみ)のように心の中では愛していた。が、彼の教育に、その存在に、何の注意も払うまいと、努力した。何故? 彼は、自分の手、心を触れることによって、少年の未知の運命を狂わせることを恐れた。自分の呪咀に毒されて、焼き爛(ただ)れた黒紫色の運命を、正房の、青空のような将来に、感染させたくなかったのである。それ故、正隆は、母未亡人が涙を流して歎くほど、正房を放擲してしまったのである。

佐々未亡人の保護の許にあるという点に於て、等しく二人の「子」である正隆と正房とは、また等しく、彼女の愛を分割されていた。正隆は、可哀そうな、運の悪い変り者として、正房は、不幸な母の無い片親の、しかも頼りない片親の子として、未亡人の狂熱的な愛の許に孚(はぐく)まれた。