Japanische Klassiker mit Furigana
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こすいとかれら
湖水と彼等
豊島 与志雄
Lesen Sie 湖水と彼等 (こすいとかれら) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.351 Zeichen · 25 Bildschirme
それに今日のような雨の日は特にね……。」と云って彼女はかすかに微笑んだ。
「でも今日は大変いい景色でした。それで湖水の岸に長い間立っていたのはよかったのですが、急に寒くなって実際弱ってしまいました。」こう云って彼はひどく真面目な顔をしている。
雨がしきりなしにまだ降っていた。囲炉裡に燃ゆる火が昼間の光と湿った空気とを映して淡々しい。
「今日はお一人ですか?」と彼がきいた。
「ええ此の頃ではお客もあまり無いのですから、女中は二三日前に兄の方へ、やはり温泉場で宿屋をしていますものですから、その方へよこしてしまいました。ここまで三四町しかありませんからね。それに晩は泊りに来てくれますし……」
「昼間でもお一人でしたら随分静かでしょう。」
「ええもう静かすぎて淋しい位ですよ。でもそんな時、いつも聖書を少しずつ読むことにしていますの。」
と云って彼女はちらと男の顔を見た。「淋しい時は大変に慰められますから。」
「ずっと前からの御信仰ですか。」
「そんなに昔からでもありませんけれど……。」云い乍ら彼女はその当時のことを思い浮べた。夫の死後故郷に帰って余儀ない事情からこの湖畔の茶店を守る身とまでなった当時のことから、ある夏に度々訪れて来た一人の信者に導かれてその途に入ったことなど。