Japanische Klassiker mit Furigana
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こはん
湖畔
久生 十蘭
Lesen Sie 湖畔 (こはん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.180 Zeichen · 47 Bildschirme
英国には、うるさい父も親類もおらず、謹直を衒うこともいらないから大きに羽根を伸し、よからぬ貴族の子弟と交わって、放埓無残な生活を送っていた。
いずれ写真ぐらいは見るだろうが、俺は父によく似た狷介な容貌を持っている。房々とした眉毛の下に猜疑心の強い陰気に光る眼があり、鼻は鷲の嘴のように傲慢に折れまがり、薄い唇は酷薄無情に固くひき結ばれている。俺はこの猛々しい面相と陰鬱な態度が相手を忌ませ不快にすることを、子供のときからよく知っていた。事実、父も母も祖母も露骨に俺を忌嫌い、冷淡邪慳に扱った。俺の記憶にあるかぎりでは、ただの一度も愛しらしい言葉を掛けられたこともなかッたから、俺はもう生涯誰からも愛されることはないのだと断じこみ、はかないあきらめを抱いて鬱々としていた。それにしても俺はどんなに人に愛されたいと思ったか知れぬ。もしそのような相手に行逢ったら、その人のためにいつでも命を捨てようと、二六時中、心のうちで誓っていた。十二三歳の頃のことである。
その後、幾度か人を愛したことがあったが、俺の心は自信を失って萎縮しているものだから、他人に愛の証拠を求める前に、まず失望したときのはかなさを考え、殊更に不愛想を装って自分から身をひいてしまうのだ。