Japanische Klassiker mit Furigana
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おぼるるもの
溺るるもの
豊島 与志雄
Lesen Sie 溺るるもの (おぼるるもの) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.690 Zeichen · 36 Bildschirme
お店では、まるで出たての娘のように、姉ちゃんが付添ってくれた。
「ねえ、喜代ちゃん、」と姉ちゃんは低い声で云った、「もっとしっかりしなくちゃ駄目よ。あの人……大事にとりもつのはいいが……思い込むなんて、お前さんにも似合わない。こんなところに来て、酒ばかりのんで、碌にあそんでもいかないでさ、どうしたって場違いよ。場違いのお客なんか、長続きはしないからね。」
そんなことはあたしにも分っていた。またあたしは、あの人を思い込んでるのでもなかった。ただ、あの人と逢ってる時が一番気楽だった。様子をつくることもいらないし、嘘をつくこともいらなかった。というよりも、あの人の前では、様子がつくれなかったし、嘘が云えなかった。あたしは気儘勝手に自分を投げ出すだけだった。それかって、あの人から愛されるとも思っていなかった。あの人はいつも、あたしのことよりか、こういう商売をしてるあたし達というようなことを、ぼんやり考えてるらしかった。変に掴みどころがなかった。――あの人はいつも明るいのが好きだった。カーテンをすっかりあけて、窓に日の光がさすのが好きだった。夜分は電燈の光が薄暗いと云った。