Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうねん
潤一郎ラビリンスI――初期短編集
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスI――初期短編集 (しょうねん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.319 Zeichen · 84 Bildschirme
潤おいのある唇や滑かな舌の端が、ぺろ/\と擽ぐるように舐めて行く奇怪な感覚は恐ろしいと云う念を打ち消して魅するように私の心を征服して行き、果ては愉快を感ずるようになった。忽ち私の顔は左の小鬢から右の頬へかけて激しく蹈み躪られ、其の下になった鼻と唇は草履の裏の泥と摩擦したが、私は其れをも愉快に感じて、いつの間にか心も体も全く信一の傀儡となるのを喜ぶようになってしまった。
やがて私も俯向きにされて裾を剥がされ、腰から下をぺろ/\と喰われてしまった。信一は、二つの死骸が裸にされた臀を土間へ列べて倒れている様子を、さも面白そうにから/\笑って見て居たが、其の時不意に先の女中が小屋の戸口に現れたので、私も仙吉も吃驚して起き上った。
「おや、坊ちゃんは此処にいらっしゃるんですか。まあお召物を台なしに遊ばして何をなすっていらっしゃるんですねえ。どうして又こんな穢い所でばかりお遊びになるんでしょう。仙ちゃん、お前が悪いんだよ、ほんとに」
女中は恐ろしい眼つきをして叱りながら、泥の足型が印せられて居る仙吉の目鼻を、様子ありげに眺めて居る。私はまだ蹈みつけられた顔の痕がぴり/\するのをじっと堪えて何か餘程の悪事でも働いた後のような気になって立ちすくんだ。