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Japanische Klassiker mit Furigana

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しょうねん

潤一郎ラビリンスI――初期短編集

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 潤一郎ラビリンスI――初期短編集 (しょうねん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.319 Zeichen · 84 Bildschirme

Aozora Bunko

「何でもあたしの云う通りになるだろうね」

「………」私は真っ蒼な顔をして、黙って頷いた。

「お前は先仙吉と一緒にあたしを縁台の代りにしたから、今度はお前が燭台の代りにおなり」

忽ち光子は私を後手に縛り上げて仙吉の傍へ胡坐を掻かせ、両足の踝を厳重に括って、

「蝋燭を落さないように仰向いておいでよ」

と、額の真中へあかりをともした。私は声も立てられず、一生懸命燈火を支えて切ない涙をぽろ/\こぼして居るうちに、涙よりも熱い蝋の流れが眉間を伝ってだら/\垂れて来て眼も口も塞がれて了ったが、薄い眼瞼の皮膚を透して、ぼんやりと燈火のまたゝくのが見え、眼球の周囲がぼうッと紅く霞んで、光子の盛んな香水の匂いが雨のように顔へ降った。

「二人共じっとそうやって、もう少し我慢をしておいで。今面白いものを聞かせて上げるから」

こう云って、光子は何処かへ行って了ったが、暫くすると、不意にあたりの寂寞を破って、ひっそりとした隣の部屋から幽玄なピアノの響きが洩れて来た。

銀盤の上を玉あられの走るような、渓間の清水が潺湲と苔の上をしたゝるような不思議な響きは別世界の物の音のように私の耳に聞えて来る。