Japanische Klassiker mit Furigana
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はなかみろうにん
濞かみ浪人
吉川 英治
Lesen Sie 濞かみ浪人 (はなかみろうにん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.425 Zeichen · 39 Bildschirme
親の垢
親の垢
几帳面な藩邸の中に、たった一人、ひどく目障りな男が、この頃、御用部屋にまごまごしている。
彼は、俗にいう、ずんぐりむッくりな体格で、年は廿六、七歳だった。若いくせにいつも襟元がうす汚い。袴の紐もよく締まって居ないと見えて、後下がりに摺ッこけている時が多い。
『オイ、数右衛門』
と、呼ぶと、
『ウウム』
と、体ぐるみ廻して振向くと云ったような鈍重漢である。すこし猪首のせいであろうが、そのくせ人を見る眼は、ぎょろりと一癖あるので、そう小馬鹿にも扱い難い。
従って、彼にはまだ友達ができない。尊敬する気にはなれないし、顎で使うには厄介なのだ。ここの御用部屋には、馬廻り役とお使番とが雑居していて、相当用事も多いのだが、数右衛門だけは、いつも事務から遊離して、まごついているふうであった。
稀、誰でもいいような使命を当てがうと、平気でずぼらをやるし、又忘れッぽい。とても他家へ立つ使者だの、君側の大事な用向などには遣れたものではない。
だから御用部屋が閑だと彼もほっとするらしい。忙しい時まごまごするのは、彼の責任感がさせるのだった。閑になると、上役や同僚のやっている囲碁を、後に立って懐ろ手で頭越しに覗いて居たりする。