Japanische Klassiker mit Furigana
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ひにおわれて
火に追われて
岡本 綺堂
Lesen Sie 火に追われて (ひにおわれて) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.022 Zeichen · 10 Bildschirme
の心はなんだか落ちつかなかった。
勉強して書きつづけて、もう三、四枚で完結するかと思うところへ、図書刊行会の広谷君が雨を冒して来て、一時間ほど話して帰った。広谷君は私の家から遠くもない麹町山元町に住んでいるのである。広谷君の帰る頃には雨もやんで、うす暗い雲の影は溶けるように消えて行った。茶の間で早い午飯をくっているうちに、空は青々と高く晴れて、初秋の強い日のひかりが庭一面にさし込んで来た。どこかで蝉も鳴き出した。
わたしは箸を措いて起った。天気が直ったらば、仕事場をいつもの書斎に変えようと思って、縁先へ出てまぶしい日を仰いだ。それから書きかけの原稿紙をつかんで、玄関の二畳から二階へ通っている階子段を半分以上も昇りかけると、突然に大きい鳥が羽搏きをするような音がきこえた。わたしは大風が吹き出したのかと思った。その途端にわたしの蹈んでいる階子がみりみりと鳴って動き出した。壁も襖も硝子窓も皆それぞれの音を立てて揺れはじめた。
勿論、わたしはすぐに引返して階子をかけ降りた。玄関の電灯は今にも振り落されそうに揺れている。天井から降ってくるらしい一種のほこりが私の眼鼻にしみた。