Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとり
火の鳥
Lesen Sie 火の鳥 (ひのとり) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.740 Zeichen · 76 Bildschirme
まあ、当分、静かにして居れ。苦痛を、何か刺戟で治そうとしてはならぬ。ながい日数が、かかるけれども、自然療法がいちばんいい。がまんして、しばらくは、ここに居れ。おれは、これから、うちへ帰って、みなに報告しなければいけない。悪いようには、せぬ。それは、心配ない。お金は、一銭も置いて行かぬ。買いたいものが、あるなら、宿へそう言うがいい。おれから、宿のひとに頼んで置く。」
さちよは、ひとり残された。提燈をもって、三百いくつの石の段々を、ひい、ふう、みい、と小声でかぞえながら降りていって、谷間の底の野天風呂にたどりつき、提燈を下に置いたら、すぐ傍を滔々と流れている谷川の白いうねりが見えて、古い水車がぼっと鼻のさきに浮んだ。疲れていた。ひっそり湯槽にひたっていると、苦痛も、屈辱も、焦躁も、すべて薄ぼんやり霞んでいって、白痴のようにぽかんとするのだ。なんだか、恥ずかしい身の上になっていながら、それでもばかみたいに、こんなにうっとりしているということは、これは、あたしの敗北かも知れないけれど、人は、たまには、苦痛の底でも、うっとりしていたって、いいではないか。水車は、その重そうなからだを少しずつ動かしていて、一むれの野菊の花は提燈のわきで震えていた。