Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとり
火の鳥
Lesen Sie 火の鳥 (ひのとり) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.740 Zeichen · 76 Bildschirme
高須は、その入口に佇立した。
さちよは、高須に気がつかず、未だ演技直後の興奮からさめ切らぬ様子で、天井あおいでヒステリックな金切声たてて笑いこけていた。
「ちょっと、あなた、ごめんなさい。」
耳もとで囁き、大きい黒揚羽の蝶が、ひたと、高須の全身をおおい隠し、そのまま、すっと入口からさらっていって、廊下の隅まで、ものも言わず、とっとと押しかえして、
「まあ。ごめんなさい。」ほっそりした姿の女である。眼が大きく鼻筋の長い淋しい顔で、黒いドレスが似合っていた。「さちよと、逢わせたくなかったの。あの子は、とても、あなたのことを気にしている。せっかく評判も、いいところなんだし、ね、おねがい、あの子を、そっとして置いてやって。あの子、いま、一生懸命よ。つらいのよ。あたしには、それが判る。あら、あなたは、あたしをご存じない。」顔を赤くして、「ごめんなさい。あなた、高須さんね。そうでしょう? あたし、ひと目見て、はっと思ったの。ほんとうに、あたし、はじめてなのに、でも、すぐわかった。須々木乙彦の、御親戚。どう? あたし、なんでも知っているでしょう?」数枝である。芝居がはじまって、この二、三日、何かと気がもめて、きょうはホオルを休んで楽屋に来ている。