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Japanische Klassiker mit Furigana

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はいいろのきおく

灰色の記憶

久坂 葉子

Lesen Sie 灰色の記憶 (はいいろのきおく) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.588 Zeichen · 132 Bildschirme

Aozora Bunko

ず知っており、私は特別の恩沢をうけて拝聴させられるのである――名前をきいても黙っている女の人から電話がきたり……。

こんなことの毎日が、私にとって大へんな興味であったのに、だんだんそれは何でもないことになって来て、ただ一人だけ、分家氏の一挙手一投足が私の注意をひいていた。

ある夕方、彼が白痴のような口許に、火のついていない煙草をくわえてぶらぶら街を歩いているのに出遇った。ポケットにいつも手をつっこんでいた。両脚を外側へ出し、お腹をつき出して歩く癖があった。遠くからすぐに彼だと判明した。私は、会社から帰りであったので、一応髪の毛をときなおし、少し化粧をしていた。ややして彼は私に気がついた。

「かえりか、会社終ったんか」

横柄に問うた。私は笑ってうなずいた。

「ついてこい」

彼は命じた。私は二三歩後を女中のような気持になって大人しく従った。露地を二つ三つまがって奥まった格子戸の家の前へ来た。彼は、さっさと靴をぬいで――決して紐をとくことをしなかった。――座敷の方へあがった。私は躊躇して玄関でたっていた。

「ふみ、ふみ居るか……」

頭髪をきれいにアップにゆいあげた若い女中が、べたべたとお白粉をぬりたくった顔を廊下からひょいと出し、分家氏と私とに愛想のよい笑いを送った。