Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
てんきぼ
点鬼簿
Lesen Sie 点鬼簿 (てんきぼ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.345 Zeichen · 9 Bildschirme
は恐らくは大きい目をしたまま、この枝のとげとげしい木瓜の樹を見つめていたことであろう。
「これはお前と同じ名前の樹。」
伯母の洒落は生憎通じなかった。
「じゃ莫迦の樹と云う樹なのね。」
伯母は「初ちゃん」の話さえ出れば、未だにこの問答を繰り返している。実際又「初ちゃん」の話と云ってはその外に何も残っていない。「初ちゃん」はそれから幾日もたたずに柩にはいってしまったのであろう。僕は小さい位牌に彫った「初ちゃん」の戒名は覚えていない。が、「初ちゃん」の命日が四月五日であることだけは妙にはっきりと覚えている。
僕はなぜかこの姉に、――全然僕の見知らない姉に或親しみを感じている。「初ちゃん」は今も存命するとすれば、四十を越していることであろう。四十を越した「初ちゃん」の顔は或は芝の実家の二階に茫然と煙草をふかしていた僕の母の顔に似ているかも知れない。僕は時々幻のように僕の母とも姉ともつかない四十恰好の女人が一人、どこかから僕の一生を見守っているように感じている。これは珈琲や煙草に疲れた僕の神経の仕業であろうか? それとも又何かの機会に実在の世界へも面かげを見せる超自然の力の仕業であろうか?