Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほのおのなかにうたう

焔の中に歌う

野村 胡堂

Lesen Sie 焔の中に歌う (ほのおのなかにうたう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.476 Zeichen · 27 Bildschirme

Aozora Bunko

まことに操縦自在です。深井少年などでは歯の立つこっちゃありません。

「だけど、本当によかったワネ、あなたが、自動車の前へ引っくり返って、目を廻しなすった時は、私本当にどうしようかと思ったワ、幸い家が近かったから、運転手と助手に、ここまで運んでもらって、今しがた先生へ電話をかけたばかりのとこよ、そう早く直るとは思わなかったんですもの……そりゃ随分びっくりしたワ、ネ、こんなよ、御覧なさいな、私の心臓はフォックス・トロットを踊ってるでしょう」

深井清一の手を取って、胸のあたりにかざすと、肌も匂うばかりの青磁色の薄い洋装の下に、なるほど女の心臓は活溌に踊って居るようであります。

それにしてもこれは、何んという人を嘗めた女でしょう。面喰ってばかり居た深井清一も、この時漸く落着いた心持で、相手の顔を正面から見直しました。が、

「あなたは、駒……」

危うく言おうとして、深井少年は言葉を半分呑み込んでしまいました。

自分と相対して居るこの妖艶無比な女は、まぎれもなく、近頃評判の歌い手、あの洋行帰りの駒鳥絹枝に相違なかったのです。

次高音歌手の駒鳥絹枝は、三浦環や藤原義江と共に、日本が生んだ世界的名歌手の一人でした。