Japanische Klassiker mit Furigana
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きせる
煙管
Lesen Sie 煙管 (きせる) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.489 Zeichen · 14 Bildschirme
すると、誰一人、拝領を願いに出るものがない。前に同じ金無垢の煙管を二本までねだった河内山さえ、じろりと一瞥を与えたなり、小腰をかがめて行ってしまった。同席の大名は、勿論拝見したいとも何とも云わずに、黙っている。斉広には、それが不思議であった。
いや、不思議だったばかりではない。しまいには、それが何となく不安になった。そこで彼はまた河内山の来かかったのを見た時に、今度はこっちから声をかけた。
「宗俊、煙管をとらそうか。」
「いえ、難有うございますが、手前はもう、以前に頂いて居りまする。」
宗俊は、斉広が飜弄するとでも思ったのであろう。丁寧な語の中に、鋭い口気を籠めてこう云った。
斉広はこれを聞くと、不快そうに、顔をくもらせた。長崎煙草の味も今では、口にあわない。急に今まで感じていた、百万石の勢力が、この金無垢の煙管の先から出る煙の如く、多愛なく消えてゆくような気がしたからである。……
古老の伝える所によると、前田家では斉広以後、斉泰も、慶寧も、煙管は皆真鍮のものを用いたそうである、事によると、これは、金無垢の煙管に懲りた斉広が、子孫に遺誡でも垂れた結果かも知れない。