Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme
飽きも飽かれもせぬ仲を、復讐と、彼女の幸福のために、哀恋の糸を自ら絶ち切って武士なればこそ、辛い大次郎ではあった。
佐吉は声を忍ばせて、
「それじゃあ行くか。いま言ったとおり、おれが預かったからにゃあ、大事な客人として誰にも指一本指させるこっちゃあねえ。安心していなせえよ。」
「思わぬ苦労で、千浪は身体が弱っておるらしい。充分ともに気をつけてやってくれ。」
と捨て行く妻の身を案じて、なおも佐吉にくれぐれも頼んだのち、白覆面の煩悩児伴大次郎、白衣の懐手の袂をぽんと背後に撥ねたかと思うと、
「ではいずれ――。」
飄然として、この伝馬町の旅籠文珠屋を後にした。
煩悩の女髪を宿す右近三郎兼安の朱鞘に、暮れゆく陽ざしを赤々と照り返して。
こうして、文珠屋佐吉は、あれほど恋い慕っていた千浪様を己が家に置くこととなったが、それと同時に彼佐吉、千浪に対する煩悩をさらりと捨てて――こう心気一転すれば、さっぱりした文珠屋である。親友の妻と奉って、千浪様々、下へも置かない持てなし、男だけで女のいないのを売り物にしていた宿屋だけに、この美しい客人は、番頭、小僧をはじめ、下男たちも大喜びで、一にも千浪様、二にも千浪さま。