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Japanische Klassiker mit Furigana

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ぼんのうひぶんしょ

煩悩秘文書

林 不忘

Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme

Aozora Bunko

」

とやにわに、人々の肩越しに、祖父江出羽守をゆび指した。

「そうだ、ここにいる。なんだ、こんなところに立っていたのか。」

「お侍さん、もう一度やってお見せなすっておくんなせえ。」

「もう一番お願えしやす。」

出羽守が気がつくと、人々の顔がいっせいに彼に向いて、なかには、前へ来てお辞儀をするもの、何本もの手が、背後からぐいぐいと押し、前から引っ張って、

「いやおれは違う。おれはこの居合抜きの侍ではない。」

出羽は頭巾の中で苦笑して、抗弁やら弁解やら――今さら城主の祖父江出羽だとも言えず、また言っても、殿様がこんな風態で、一人で歩いているなどは、誰も信じてくれるもののないのは知れきっている。

第一、殿様はいま、あの行列の駕籠に揺られて通って行ったばかり、今ごろは社殿で、厳粛に参拝していると思われているのだから――。

「違うも違わねえもありゃしねえ。お前さんは、今ひょっくり見えなくなったあの白覆面のお侍じゃあねえか。」

「着付けから紋まで同じだ。そんなことを言わねえで、もう一ぺんやって見せてくんなせえ。」

「違う! 違うと言うのに! これ、放せ、放さぬか。」

と、争いながら出羽は、群集の手で、とうとうその駕籠と千浪のそばへ押し出されてしまった。