Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme
山中、暦日なし。
のんべんだらりと滞在して、山の宿屋めしにもあきてきたが。
元来法外は、じぶんもいささか旅にでも出て都塵を洗いたい気持ちもあったし、それよりも、気らくな旅の起き臥しに、まず二人を親しませたい心づかいから、折から大次郎が言いだしたのを幸い、かれを案内に立ててあたふたと、ああしてこの深山の湯へ分け入って来たのだけれど、そういつまでも江戸の道場を空けておくわけにもいかない。
きょうは帰ろう、明日は発とうと思うのだが、大次郎ここに何か目的があるらしく、しきりにその日を待つようすで、いっかな腰を上げようともしない。
そのうちに、どうやら法外も山に根が生えた気味で、とうとう三人、今日まで藤屋に日を重ねてきたのだけれど。
その、大次郎の待つめあてとは何か。
第一、かれは、どうしてこんな辺鄙な場所を知っていて、そして何しにここへ来、今まで動こうとしなかったのか――。「身許を包んでいたわけではありません。ただいま先生にも申し上げましたが、私は、この近所の、山伏山のむこう側にあたる田万里というところの生れで――。」
眼の大きな、すっきりした顔を千浪へ向けて、伴大次郎が静かに語りだした。