Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぼんのうひぶんしょ

煩悩秘文書

林 不忘

Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme

Aozora Bunko

「その村は、わたくしの一家は死に絶え、一村ことごとく離散して、今はあと形もありません。私としては、家ひとつない昔の部落あとにも、言いようのない懐しさを抱いておりますが、行ってみたところで、その淋しさに胸を打たれるに相違ない、と今はまだ、とても帰ってみる気にはなれませぬ。で、私が、先生と千浪さまのお供をして、黙ってここへまいりましたのは、その山伏山のかげのむかしの田万里を、ひそかに訪れんがためではござりませぬ。」

今年で、ちょうど七年まえのことである。

千代田城菊の間出仕、祖父江出羽守の狩猟地だった田万里は、殺生を好む出羽守のたびたびの巻狩りと、そのたびごとの徴発、一戸一人の助け人足、荷にあまる苛斂誅求のために、ついに村全体たってゆけなくなり、出羽守へ万哭のうらみのうちに、一村散りぢりばらばらに、住み慣れた田万里を捨てて村人は、他国に楽土を求めて、思いおもいに諸国へ落ち延びたのだった。

祖父江出羽守の猟座、山伏山の田万里は、こうしてあくなき殿の我慾の犠牲に上げられて、一朝にして狐狸の棲家と化し去ったのだった。

法外流のつかい手、下谷の小鬼と名を取った伴大次郎は、奇しくもこの田万里の出生だという。