Japanische Klassiker mit Furigana
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もゆるほお
燃ゆる頬・聖家族
堀 辰雄
Lesen Sie 燃ゆる頬・聖家族 (もゆるほお) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.309 Zeichen · 144 Bildschirme
其処からまた、彼の目的地であるところの療養所のある高原までは自動車に乗らなければならなかった。途中で彼は、その湖畔にある一つのみすぼらしいバラック小屋の前に車を止めさせた。そこには、もと彼の家で下男をしていたことのある一人の老人が住んでいた。その老人はもう七十位になっていた。そうしてもう十何年というもの、この湖畔の小屋にまったく一人きりで暮しているのだった。ときどき神経痛のために半身不随になるということを聞いていたが、そんな時は一人でどうするのだろうと、その老衰した様子を見ながら彼は思った。「それにしても、何故こんなにまでなりながら生きていなければならないのかしら?」そういう今の自分にはよく解らないような疑問がふと彼の心を曇らせた。
そのバラック小屋の窓からは、古画のなかの聖母の青衣のような色をした、明けがたの湖水が、ほんのりと浮んで見えた。――老人はいつか彼の前に古びた聖書を開いていた。そうして彼のために熱心な祈祷をしだした。だが彼はそれには別に耳を貸そうともしないで、ただ不思議そうに、老人の手にしていた聖書の背革が傷んでいると見えて一面に膏薬のようなものが貼ってあるのや、その老人のぶるぶる顫えている手つきが何となく鶏の足に似ているのを眺めていた。