Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちかえる
父帰る
菊池 寛
Lesen Sie 父帰る (ちちかえる) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.615 Zeichen · 16 Bildschirme
母 ああそうやそうや。つい忘れとった。(台所の方へ立って行く、姿は見えずに)杉田さんが見たというのもなんぞの間違いやろ。生きとったら年が年やけに、はがきの一本でもよこすやろ。
賢一郎 (やや真面目に)杉田さんがその男に会うたのは何日のことや。
新二郎 昨日の晩の九時頃じゃということです。
賢一郎 どんな身なりをしておったんや。
新二郎 あんまり、ええなりじゃないそうです。羽織も着ておらなんだということです。
賢一郎 そうか。
新二郎 兄さんが覚えとるお父さんはどんな様子でした。
賢一郎 わしは覚えとらん。
新二郎 そんなことはないでしょう。兄さんは八つであったんやけに。僕だってぼんやり覚えとるに。
賢一郎 わしは覚えとらん。昔は覚えとったけど、一生懸命に忘れようと、かかったけに。
新二郎 杉田さんは、よくお父さんの話をしますぜ。お父さんは若い時は、ええ男であったそうですな。
母 (台所から食事を運びながら)そうや、お父さんは評判のええ男であったんや。お父さんが、大殿様のお小姓をしていた時に、奥女中がお箸箱に恋歌を添えて、送って来たという話があるんや。
新二郎 なんのために、箸箱をくれたんやろう、ははははは。