Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうかしあかちょこべえ
狂歌師赤猪口兵衛
夢野 久作
Lesen Sie 狂歌師赤猪口兵衛 (きょうかしあかちょこべえ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.418 Zeichen · 79 Bildschirme
「ええ。静かにせんか……」
目明の良助は罵りながら、死骸の袖口で両手の指先を拭いて立上った。静かに背後の和尚をかえりみた。
「和尚様。済みませんが莚を二つばかり貸いて下さらんか……」
「ヘイヘイ。それはモウ。南無南無……」
「アッ。蔵元屋の御寮さんが見えた。旦那どんも一緒に……」
口々にそう言う人垣を押しわけて四十恰好の婀娜っぽい女房が入って来た。眉の痕の青い櫛巻髪に黒繻子の腹合わせ帯。小紋まがいの裾を引擦った突かけ草履の脛も露わに、和尚と良助を突飛ばすようにして死骸の傍に走り寄ると……ワッ……とばかりに取縋って泣出した。
「まあ、お熊……お前はまあ何と言う……ダダ……誰が斯様なこと、したかいなあ……」
そのアトから人を分けて入って来た半白髪の恰幅のいい老人は、女房の肩ごしに娘の死骸を一眼見るや否や、両手をシッカリと握り合わせたまま石甃の上にドスンと尻餅を突いてしまった。両眼を閉じて唇をワナワナと震わしたが、一言も物を言い得ないまま「ハアア――ッ……」と骨身に泌みるようなタメ息を一つして、涙をハラハラと流した。
その肩に取縋った女房は、息も絶え絶えに泣きじゃくって身を震わした。