Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうげんのかみ
狂言の神
Lesen Sie 狂言の神 (きょうげんのかみ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.478 Zeichen · 31 Bildschirme
ごっとん、ごっとん、のろすぎる電車にゆられながら、暗鬱でもない、荒涼でもない、孤独の極でもない、智慧の果でもない、狂乱でもない、阿呆感でもない、号泣でもない、悶悶でもない、厳粛でもない、恐怖でもない、刑罰でもない、憤怒でもない、諦観でもない、秋涼でもない、平和でもない、後悔でもない、沈思でもない、打算でもない、愛でもない、救いでもない、言葉でもってそんなに派手に誇示できる感情の看板は、ひとつも持ち合せていなかった。私は、深刻でなかった。電車の隅で一賤民のごとく寒さにふるえて眼玉をきょろきょろうごかしていただけのことであったのである。途中、青松園という療養院のまえをとおった。七年まえの師走、月のあかい一夜、女は死に、私は、この病院に収容された。ひとつきほど、ここで遊んで、からだの恢復をはかったのであるが、そのひとつき間の生活は、ほのかにではあったけれども、私に生きているよろこびを知らせて呉れた。それからの七年間、私にとっては五十年、いや十種類の生涯のようにも思われたほど、さまざまの困難が起り、そのときそのときの私の辛抱もまったくむだのようであって、私にはあたりまえの生活ができず、ふたたび死ぬる目的を以て、こんどはひとりでやって来た。