Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きょうば

狂馬

佐左木 俊郎

Lesen Sie 狂馬 (きょうば) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.577 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

*

青が養われている場所には、夜になると、若い働き盛りの馬が二三匹繋がれた。

若い馬は、ぴしりっぴしりっと尾を振った。虻がいるのでも蚊がいるのでもない。ただぴしりっぴしりっと無暗に尾を振った。人が通りかかると、首を高く持ち上げて(ほほほ!)と嘶いた。脚を上げては石炭の破片を踏み砕いた。何をやっても、がつがつとそれを喰った。明るい世界から引き込まれて来たばかりの馬は、全身が感覚で、全身が力だった。

青は、この若い馬を見ることで、過去の記憶の中に置き忘れて来た感覚の幾分かを、そこに取り戻して来るような様子だった。そんなとき、青の耳は、微かながらに動き出すのだった。その暗い眼は、空間のどこかにただ向けられているのではなく、何かを視詰め出しているようだった。

*

炭坑にはストライキが始まっていた。坑内に働いている人達が、青のようになりたくないための運動であった。坑内からは、総ての労働者が、地上に引き上げて行くことになった。若い働き盛りの馬達は、その前に、鉱山主によって、坑の外へ引き出されていた。

併しどうしたのか、青だけは、そのままそこに残されていた。