Japanische Klassiker mit Furigana
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きつね
狐
山本 周五郎
Lesen Sie 狐 (きつね) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.471 Zeichen · 17 Bildschirme
四
べつに変ったようすもみえなかったが、「いかがでございました」と訊くと、彼はなぜかふと眼をそらした。
「いかにも、話のようなことがありました」
「ではやはりあの跫音をお聞きでしたか」
「聞きました」
みんな眼を見合せた。乙次郎は茶を一杯すすると、また晩に来るからと云いのこして下城した。
屋敷へ帰るとすぐにかれは寝た、案じていた妻はなにか訊きたそうだったけれども、かれのようすがそれを許さなかった。つねから口かずの寡ないほうであるが、その日はことに殻を閉じた貝のような感じだった。
その晩も、あくる晩も、かれは天守で夜詰めをしては昼のうち屋敷へ帰って寝た。弥左衛門は苛々して顔を見るたびに、「どうした、まだ埓があかぬか」とせきたてた。乙次郎はなかなか思うようにはまいりませんと云うだけで多くを語らなかった。そして四日めになって、雨のどしゃ降りに降るなかを、かれはいつもより早く、まだ日暮れまえに下僕もつれずひとりで出ていった。
四
乙次郎が月見櫓へあらわれたのはやはり八時ごろであった。
「今夜はすこし早くから詰めてみましょう」そう云って彼は天守へ登ったが、すこしするとふたたび詰所へあらわれた、「提燈をかして下さい」