Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうしつき
狼疾記
Lesen Sie 狼疾記 (ろうしつき) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.540 Zeichen · 47 Bildschirme
腑抜けとなり、不安も苦痛も感じなくなったような麻痺状態である。
ぼやけた彼の意識の隅に、しかし、明日出勤する学校の少女たちの雰囲気が、それだけが彼の仮死的な生活の中で、唯一の生きたものであるかのように、明るく浮上って来た。一人一人に見れば、醜くもあり卑しくもあり愚かでもある少女たちが自分の生活の中で触れ得る唯一の生きた存在なのか? 豊かであるようにと予定したはずの日々が何と乏しく虚しいことか。人間は竟に、執着し・狂い・求める対象がなくては生きて行けないのだろうか。やっぱり、自分も、世間が――喝采し、憎悪し、嫉視し、阿諛する世間が、欲しいのだろうか。例えば、と彼は考えない訳に行かない。例えば、先週勤め先の学校で国漢の老教師が近作だという七言絶句を職員室の誰彼に朗読して聞かせていた時、父祖伝来の儒家に育った自分が冗談半分その韻をふんで咄嗟に酬いて見せた。その巧拙よりも、方面違いの若い博物の教師がそんな事をして見せたものだから、老先生はすっかり驚いて、人の良さそうな大袈裟な身振で讃め上げてくれたのだが、全く、その時、自分は――尊大なるべき俺の自尊心は――何と卑小な喜びにくすぐられたことだろう! 実際、その老教師が讃めた言葉の一句一句をさえハッキリ記憶しているほど、喜ばされたのではなかったか。