Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうしつき
狼疾記
Lesen Sie 狼疾記 (ろうしつき) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.540 Zeichen · 47 Bildschirme
嘴の二呎もありそうな鳥が厭な声を立てて枝から飛立つ。
三造の考えは再び「存在の不確かさ」に戻って行く。
彼が最初にこういう不安を感じ出したのは、まだ中学生の時分だった。ちょうど、字というものは、ヘンだと思い始めると、――その字を一部分一部分に分解しながら、一体この字はこれで正しいのかと考え出すと、次第にそれが怪しくなって来て、段々と、その必然性が失われて行くと感じられるように、彼の周囲のものは気を付けて見れば見るほど、不確かな存在に思われてならなかった。それが今ある如くあらねばならぬ理由が何処にあるか? もっと遥かに違ったものであっていいはずだ。おまけに、今ある通りのものは可能の中での最も醜悪なものではないのか? そうした気持が絶えず中学生の彼につき纏うのであった。自分の父について考えて見ても、あの眼とあの口と、(その眼や口や鼻を他と切離して一つ一つ熟視する時、特に奇異の感に打たれるのだったが)その他、あの通りの凡てを備えた一人の男が、何故自分の父であり、自分とこの男との間に近い関係がなければならなかったのか、と愕然として、父の顔を見直すことがその頃しばしばあった。