Japanische Klassiker mit Furigana
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りょうしょくのはて
猟色の果
野村 胡堂
Lesen Sie 猟色の果 (りょうしょくのはて) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.611 Zeichen · 5 Bildschirme
窓を開くと、冷たい風が颯っと流れ込んで、宗三郎の熱した頭を心持よく冷やしてくれます。何時の間にやら雪は止んで、五六寸積った庭を、十六夜の月が青白く照し、世界は夢の国のように、静寂に、神秘的に変貌して居るのでした。
雑俳や漢詩なども一と捻りする宗三郎は、立ち上って行灯の灯を吹き消しました。此冴え渡る月の下に、雪の夜景を満喫しようと思い立ったのです。
「おや?」
何やら、宗三郎の眼の前に、チラリと動くものがありました。
灯を入れた雪見灯籠のあたり、雪を頂いた松の緑が淀んで、池の水の一角が、柔かい雪景色に切り込む刃金のように、キラリと光る物凄い効果だったのかもわかりません。
宗三郎はゾッと身ぶるいして、障子を締めようとしましたが、フト雪見灯籠の側に、何やら物の動くのを意識すると同時に、満月の皚々たる白銀の世界に、一点漆のように、真黒に息つくものを見て取ったのです。
髪だ、――やがてそれは、高々と結い上げた、若い女の島田髷とわかると、その髪の下に、ほのぼのと明るく、池の面を見詰めている若い女の横顔のあることに気が付いたのでした。
霞む眉、黒い瞳、赤い唇――と次第に道具立がはっきりすると、やがてしなやかな首筋、細っそりした肩から、ふくらんだ胸、帯から脚へ流るる線と、くっきり雪の中に浮上って来るのです。