Japanische Klassiker mit Furigana
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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.020 Zeichen · 131 Bildschirme
風が出たな、ああ、イヤなことだ、と、そう思っているうちに、風にしては少し重みのあるようなものが、つづいて二度ばかり、ばたん、ばたんと、ガラスを叩いたようであったが、かすかに、
「ニャア」
と云う声が、何処かに聞えた。まさか今時分、そんなことが、………と、ぎくッとしながら、気のせいかも知れぬと耳を澄ますと、矢張、
「ニャア」
と啼いているのである。そしてそのあとから、あのばたんと云う音が聞えて来るのである。彼女は慌てて跳ね起きて、窓のカーテンを開けてみた。と、今度はハッキリ、
「ニャア」
と云うのがガラス戸の向うで聞えて、ばたん、………と云う音と同時に、黒い物の影がさっと掠めた。そうか、やっぱりそうだったのか、―――彼女はさすがに、その声には覚えがあった。この間ここの二階にいた時は、とうとう一度も啼かなかったが、それは確かに、蘆屋時代に聞き馴れた声に違いなかった。
急いで挿し込みのネジを抜いて、窓から半身を乗り出しながら、室内から射す電燈のあかりをたよりに暗い屋根の上を透かしたけれども、一瞬間、何も見えなかった。想像するに、その窓の外に手すりの附いた張り出しがあるので、リリーは多分そこへ上って、啼きながら窓を叩いていたのに違いなく、あのばたんと云う音とたった今見えた黒い影とは正しくそれだったと思えるのであるが、内側から