Japanische Klassiker mit Furigana
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さるとびさすけ
猿飛佐助
織田 作之助
Lesen Sie 猿飛佐助 (さるとびさすけ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.413 Zeichen · 60 Bildschirme
そして、生きているか、死んでいるかは知らぬが、よしんば屍にせよ、恋しいひとの少しでも近くへ行きたい一心の楓の足は、食い気しか知らぬか、もしくは食い気を忘れぬという今時の娘たちの到底及びもつかぬ速さにいじらしい許りであったから、作者もこの辺りは駈足で語ろう。
何刻かの後、楓は木鼠胴六の前で知っているだけの舞いを、全部舞っていた。
「名は秋の楓だが、はて見飽きもせぬ」
と、胴六はわざとさりげなく洒落を言ってみせて、時に意味もなく笑い声を立て、手下共は何かしらやけくそめいた酒を飲み、無論胴六もしたたか痛飲し、熊掌駝蹄の宴であったが、やがてガヤガヤ入りみだれている内に、物の順序として月並み軒並みに一人残らず酔いつぶれて眠ってしまった隙をのがさず、ひそかに牢屋の鍵を盗み出してしまった楓は、にわかにガタガタと顫えながら、這うようにして牢屋の前に来ると、
「佐助様、佐助様」
どんな女の一生にも一度は必ず、そして一度しか出ぬ美しい声が、今こそあえかに唇を顫わせた。
「おお、その声は楓どの」
さすがに覚えていてくれたかと、
「お久しゅうございます」
「…………」
普段おしゃべりの佐助が鉛のように黙っているのを見て、何故こんなに変っしまったのかと楓はあやしく心が乱れて、まるでその変り方はこの楓を嫌ってしまったせいだろうか。