Japanische Klassiker mit Furigana
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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Lesen Sie 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.583 Zeichen · 240 Bildschirme
忙しがって生きて、誕生日を忘れているのも今時のお目出度さなのかもしれません。十二月二十日に国が開成山に発ち、その午後寿が来て、一月二十九日、国の帰る日まで居りました。それからきのう迄、国がひとを使う使いかたと云ったら。使っているようでは一つもないけれど。〔中略〕
わたしはきょうは、本当にお風呂にでも入って髪でも洗ってさて、と自分の暮しをとり戻したさっぱりしたよろこびをあらわしとうございます。残念なことにどっちも出来ないわ。お風呂はボイラーの底抜けが直らず、目白からもって来た桶はまだ煙突がないの、おまけにすこし底があやしいのよ。髪を洗うことは、疲れすぎて昨夜風邪ぎみでしたから、やめなければなりません。
きょうは、どこの家でもくつろいでいるのね。こうやっていると、カナリアの囀る声に混って、うれしそうにさわいでいる隣の子供の丸い足音、人の声がいたします。さっき台所の裏の氷った道を、組長さんの近藤さん(うらのはなれに住んでいる画家)が鼻歌をうたい乍ら通りました、そんな気分なのよね、だれもが。国が来たらお米の不足の騒ぎまでひとりで才覚しなくてはならぬ始末でした。