Japanische Klassiker mit Furigana
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たまつきばのいちぐう
球突場の一隅
豊島 与志雄
Lesen Sie 球突場の一隅 (たまつきばのいちぐう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.111 Zeichen · 29 Bildschirme
で松井はじっと其処に眼をつけた。
「何を見ていらっしゃるの。」とおたかはにっと笑ってみせた。
松井ははっとして眼をそらした。然しその時彼は心に非常な動揺を感じた。ある期待と妙な不安とが彼を捉えた。
「種々な目に逢ったんですが、何の足しにもなりませんわね。」と女はしんみりした調子で云った。「自分の考えなんか何の役にも立ちませんわ。ずるずると何かに引きずられてゆくような気がするんですもの。そうしちゃあ自分で自分を台なしにするんですわね。此処に来る時なんかでも、もうこれから真面目になりたいと思ったんですけれど、やはり駄目ね。」
「何が駄目だい。」
「私ね近いうちに此処を出ようかと思ってるの。」
「そしてどうするというんだい。」
「どうするって、そりゃあね……どうでもいいんですわ。そうしたらあなたの処へも一度お伺いしたいわね。」
「ああ遊びにおいでよ。御馳走は出来ないがね。」
「ほんとにいいんですか。お邪魔ではなくって?……でも村上さんやなんかお友達が始終いらっしゃるんでしょう。お目にかかるといやね。」
「そんなにいつも来やしないよ。」
「そう。では屹度お伺いするわ。私あなたの下宿はよく知ってるから。