Japanische Klassiker mit Furigana
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たまつきばのいちぐう
球突場の一隅
豊島 与志雄
Lesen Sie 球突場の一隅 (たまつきばのいちぐう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.111 Zeichen · 29 Bildschirme
「ああいますぐ。」と寝惚けた上さんの声が聞えた。
林はずっとはいって来て不思議そうに煖炉の前に立ち留った。
「もう煖炉を焚くんですか。」と彼は云った。
「ええ今ね、」と云っておたかは松井を見て卑しい笑顔を作った。「松井さんがずぶ濡れになっていらしたものですから、特別に焚いたんですよ。」
「もうそろそろ本当に焚きはじめてもいい時ですね。僕は火を見るのが大好きです。」
「ほんとにいいものですわね。」
其処に上さんが茶を持って出て来た。
「おや林さんですか。誰かと思ったら。……先日の晩は大変でしたでしょう。」
「ええ少し……。」と云って林はにやにや笑っていた。
上さんは林の顔を覗き込むようにして囁くようにこう云った。
「大丈夫ですか。」
「ええ。」と林は首肯いた。
それから林は普通の声で、上さんに西洋料理を二三品頼んだ。
「実は腹が空いたのでぶらりと出かけたんですが、こちらについ先に来てしまったんです。いえなに……、」と彼は時計を仰ぎ見た。それは九時を過ぎていた。「十時頃でいいんですよ。まだ大分雨が降っていますから。」
松井は林をじっと見た。そして支那人かも知れないと云った村上の言葉が可笑しくなった。