Japanische Klassiker mit Furigana
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たまつきばのいちぐう
球突場の一隅
豊島 与志雄
Lesen Sie 球突場の一隅 (たまつきばのいちぐう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.111 Zeichen · 29 Bildschirme
……君のように考えるのは危険だよ。君あのおたかという女は大抵の女じゃないよ。どうも陰影の少い男性的な、余りほめた顔じゃないんだが、あの眼の動きには実際豪い所があるよ。うっかりしちゃいけないぜ。」
その時松井の心におたかの顔がはっきり浮んできた。大きい束髪に結っている、眉の濃い口元のしまった男性的な顔付である。馬鹿に表情の複雑な眼が光っている……。松井はその顔を不意にはっきり思い浮べたことを意識して、心にある動揺を感じた。
「君は一体、」と村上はまた云った。「物事を余り真面目に考えすぎるからいけないんだ。世の中のことは万事喜劇にすぎないんだからね。」
村上に云わせると斯うである――人生はある事件々々の連続である。所が事件と事件との連絡関係は人力の如何ともすべからざるものである。それは人間以外のものによって決定される。人は只運命に任せる外はない。けれども一つの事件そのものは人の見方によってどうにでもなるものである。見方によって赤となり青となる。が事件そのものは常に喜劇の形を取っている。其処には偶然があり意外があり無知があり滑稽がある。で運命に頭を下げ乍らも事物を大袈裟に考えてはいけない。