Japanische Klassiker mit Furigana
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りそうのおんな
理想の女
豊島 与志雄
Lesen Sie 理想の女 (りそうのおんな) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.162 Zeichen · 77 Bildschirme
妻は子供を寝かしつけ、やがて自分も寝てしまう。そして一日が終るのだ。二人の間には何等衝突すべき材料がない。良人は後顧の患いなくして、自由に痩腕を世に揮うことが出来、妻は生計の煩いなくして、自由に驢馬の足を家庭内に伸すことが出来るのだ。……そして、良人は食を与え妻は肉体を供し、子供――彼等の惨めな後継者――が、年と共に殖えてゆく。
私は胸糞が悪くならざるを得なかった。それほど私のうちには遊惰な心が蟠っていたのだ。民衆の中堅たる最も健全勤勉な人々を、右のように漫画視して考えるほど、私のうちに頽廃的な気分が濃くなっているのであった。そしてこれは皆、家庭というものから根こぎにされた結果であった。
夜遅く家に帰る時、私は牢屋へ戻る罪人のような心地がした。家の中には、秀子の息吹きが、その重々しい蛸の木が、頑として根を張ってるように思われた。私はおずおずと、寄せられてる玄関の戸を開き、それに自分で締りをした。家の者はみな寝ていた。私は子供の眼を覚すまいと抜足して、寝室へ忍び込み、冷たい蒲団の中にもぐり込んだ。秀子は大抵眠っていた。そしてごく稀には、薄日を開いて、而も底光りのする黒い眼で、私の方をじっと見た。