Japanische Klassiker mit Furigana
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ことのそらね
琴のそら音
Lesen Sie 琴のそら音 (ことのそらね) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.985 Zeichen · 42 Bildschirme
頭から抜き取った手を顔の前に出して無意味に眺める。爪の裏が垢で薄黒く三日月形に見える。同時に胃嚢が運動を停止して、雨に逢った鹿皮を天日で乾し堅めたように腹の中が窮窟になる。犬が吠えれば善いと思う。吠えているうちは厭でも、厭な度合が分る。こう静かになっては、どんな厭な事が背後に起りつつあるのか、知らぬ間に醸されつつあるか見当がつかぬ。遠吠なら我慢する。どうか吠えてくれればいいと寝返りを打って仰向けになる。天井に丸くランプの影が幽かに写る。見るとその丸い影が動いているようだ。いよいよ不思議になって来たと思うと、蒲団の上で脊髄が急にぐにゃりとする。ただ眼だけを見張って、たしかに動いておるか、おらぬかを確める。――確かに動いている。平常から動いているのだが気がつかずに今日まで過したのか、または今夜に限って動くのかしらん。――もし今夜だけ動くのなら、ただごとではない。しかしあるいは腹工合のせいかも知れまい。今日会社の帰りに池の端の西洋料理屋で海老のフライを食ったが、ことによるとあれが祟っているかもしれん。詰らん物を食って、銭をとられて馬鹿馬鹿しい廃せばよかった。