Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
だがこの母では――。世の中の諸分けを呑み込み顔に巧利の賢さを張り拡がせ、大まかな美しさのまゝに老い初めたわが母の段々肥満しかけたその胸の中には、たゞ慾と得と手以外の考えしかないのを今更知り返すと、岸壁に突き当ったような感じが衝き上げて来まして、俄にこころ寂しく、その意味での涙を催しかけたのを、母に覚らすまいとすると、こゝにまた一つの自分を偽装するようにふいと身体が弾み出して来ました。わたくしは「では、行きます」と軽くお叩頭をした後、「ちょっと見てゝよ」と母の前へ立ち上りました。そこで、少し後に下って右手の掌を母の眼の前へ拡げて差し出し、左の肘で男の肘を掻き抱く恰好をしますと同時に、
「楽しい、なかじゃ」と口で唄いつゝ、前方へ向けて拡げた掌を肩腰の捻り方の呼吸でおおらかに空間へひるがえして上げながら、右の髪の鬢の上の辺へ持ち来すまでに「ないかいな」と唄い切ると、そこで藤間にやゝ関西の西川流を加味した母親仕込みの捌きのいゝ足拍子を一つとんとして畳を打つと同時に右手をぴたりと虚空に翳して止めました。
「いかが」
これは母が生れながらに冠っている殻の性格に対し、今、殻を冠り始めたわたくしの殻の挨拶でした。